2016年8月10日水曜日

シネマ歌舞伎クラシック(しねまかぶきくらしっく)



シネマ歌舞伎クラシック(しねまかぶきくらしっく)予告動画

[第一部] 勧進帳(かんじんちょう)
[第二部] 身替座禅(みがわりざぜん)
[第三部] 船弁慶(ふなべんけい)

『勧進帳』作品紹介

『勧進帳』は、能の『安宅』を素材にした舞踊劇。天保十一(一八四〇)年、作者は三世並木五瓶、作曲が四世杵屋六三郎、西川扇蔵の振付で、江戸河原崎座にて七世市川團十郎により、初演されました。以後、九世團十郎によって洗練され、今では歌舞伎の人気演目の代表格となっています。
幕が開くと富樫が登場。富樫は颯爽とした容姿と美声、明晰な台詞回しが要求される役柄です。続いて、花道へ登場した義経は、源氏の御曹司としての気品、落人としての憂いを漂わせねばならぬ難役。そして、義経に付き従う四天王に続いて、武蔵坊弁慶が登場します。弁慶は知勇を兼ね備え、台詞、芝居、舞踊の技量と共に、荒事の力感が必要とされる立役屈指の大役とされています。
安宅の関の通行を拒まれた弁慶たちは、祝詞という合方に合わせて勤行を始め、これに続いて、前半の最大の見どころである勧進帳の「読み上げ」、さらに「山伏問答」となります。次いで強力姿の義経が見咎められ、弁慶が義経を激しく打擲。これを止めた富樫は、一行を義経主従と察しながら、関所の通過を許します。危機を脱した義経が弁慶を讃える場面は、弁慶の忠誠心、弁慶を労わる義経の心情を描き出します。そして、富樫が再び登場し、富樫の酒の勧めに従い、弁慶の延年の舞、幕外の飛び六方を踏んでの引っ込みと、緩急を織り交ぜた見せ場が続きます。

『身替座禅』作品紹介

『身替座禅』は、作詞は岡村柿紅、作曲は常磐津が七世岸澤式佐、長唄が五世杵屋巳太郎で、明治四十三(一九一〇)年、市村座にて初演。狂言の大曲『花子(ルビ:はなご)』が題材です。六世尾上菊五郎、七世坂東三津五郎のコンビでの上演は好評を博し、再演時には、菊五郎家の家の芸である「新古演劇十種」に加えられました。
恐妻家の山蔭右京は、かつて深い契りを交わした花子が上洛したことを知り、何とか逢瀬を実現しようと画策します。そして、持仏堂に籠って座禅をすると偽り、太郎冠者を身替りに仕立て、花子の許へと出かけます。浮気性の右京が、その思いを遂げるため、何とか妻の玉の井を騙そうとするやりとりが前半の見どころとなっています。後半は、花子の許から帰ってきた右京が、花子との逢瀬の様子を巧みな踊りで語ってみせます。この作品の最大の見どころであり、舞踊劇の本領が大いに発揮されるこの場面は、衾の下で嫉妬と夫への怒りに震える玉の井、それに気づかずに浮かれた様子の右京の姿の対比が面白く描かれています。
ユーモア溢れる喜劇ですが、松羽目物としての格式と品格をも湛えることが重要で、演者の技量が求められるしどころ満載の狂言舞踊です。

『船弁慶』作品紹介

『船弁慶』は、明治十八(一八八五)年に九世團十郎が初演した松羽目舞踊で、新歌舞伎十八番の一つ。作者は河竹黙阿弥、作曲は杵屋正次郎。九世の死後、六世菊五郎がさらに洗い上げて当たり役にしました。能『船弁慶』を題材にしていますが、静御前の舞や後シテの扮装、演技など、随所に歌舞伎味を取り入れた構成に工夫と特色があります。
弁慶が登場して義経主従が都落ちする理由と大物浦に着いたことを語ると、花道から義経一行が現れ、本舞台に一同が揃ったところで、静御前を都へ帰すように進言します。静は義経との別れを悲しみ、義経の所望で「都名所」を舞います。黙阿弥が創作した歌舞伎風の舞です。能面の心で表情を殺して、動きと舞で静の悲しみを見せるのが菊五郎の狙いでした。最後に烏帽子が落ちるのが悲しみの表現の象徴です。出船になり舟長と舟子たちが賑やかに踊るのは息抜きの場面。次に、早笛の太鼓で知盛の幽霊が花道に現れます。銀色の法被、大口に薙刀を持った姿は能写しですが、歌舞伎らしく藍隈を取っています。「あら珍しや、いかに義経」の台詞の後、知盛は義経に迫りますが、荒海に現れた幽霊を表現するため、足の動きに技巧を見せます。薙刀を首に当てて回転しながら引っ込む幕外は豪快で、最大の見どころとなっています。

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